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リンパ管腫/リンパ管腫症

りんぱかんしゅ・りんぱかんしゅしょう

lymphangioma; lymphangiomatosis

告示番 号15
疾病名リンパ管腫/リンパ管腫症
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概念・定義

 リンパ管腫は主に小児(多くは先天性)に発生する大小のリンパ嚢胞を主体とした腫瘤性病変であり、生物学的には良性である。全身どこにでも発生しうるが、特に頭頚部や縦隔、腋窩に好発する。多くの症例では硬化療法や外科的切除等による治療が可能であるが、重症例はしばしば治療困難であり、気道閉塞などの機能的な問題や整容的な問題を抱えている。血管病変を同時に有することもある。近年国際的に普及しつつあるISSVA(International Society of Studying Vascular Anomaly, 国際血管奇形研究学会)分類においては脈管病変の一つとしてリンパ管奇形に含められている。これを受けて最近ではリンパ管腫を「リンパ管奇形」と呼ぶことが増えている。英語名はlymphangioma、cystic or common lymphatic malformation、cystic hygromaなど。リンパ管腫を病変の一部に含む、より複雑な症候群がいくつか知られており(Klippel-Trenaunay 症候群など)、診断・定義についてはまだ不確定なところがある。
 一方、リンパ管腫症はリンパ管腫と同様に拡張したリンパ管による浸潤性病変を主体とするが、溶骨性変化や多臓器での発生、乳糜胸水・腹水などのリンパ漏など多彩な臨床症状を発生する。多くが難治性で、現時点では確実に有効な治療法はない。似たような症状のゴーハム病は骨溶解症状がより顕著であるが、リンパ管腫症との鑑別ははっきりしない。リンパ管腫症は英語名ではlymphangiomatosis、generalized lymphatic anomalyなどと呼ばれる。
 リンパ管腫症とリンパ管腫は鑑別が難しく、現時点では明確に分類できない場合がある。リンパ管腫様病変が離れた位置に複数あったり、病変が拡大、浸潤傾向を認める場合にはリンパ管腫症としている。

疫学

 リンパ管腫の発生率は不明であるが1000-5000出生に1人と推定される。正確な有病率は不明であるが患者数は推定10,000人程度である。ほとんどが幼少期に発症し、男女差、遺伝性は認めない。リンパ管腫症(ゴーハム病を含む)は国内での患者数は100例程度と推定される(全国調査より)。小児、若年者に多く、ほとんどが20歳までに発症する。男女差、遺伝性は認めない。

病因

 リンパ管腫の多くは先天性であり、頚部・腋窩など胎生期にリンパ嚢を形成する部からの発生が多いことや出生前診断もされることがあるという臨床的特徴より、胎生のリンパ管形成時期に何らかの異常を生じ病変を形成する、と考えられているが、原因は定かでない。リンパ管腫症も同じく脈管奇形の一つとされるが、発症は比較的遅くまた突発的であることが多く、また進行性を認める点などでリンパ管腫とは異なり、先天性であるかどうかを含めて病因は全く不明である。

症状

 リンパ管腫の多くは頭頚部、体幹、四肢の体表に突出する腫瘤を形成する。胸腔・腹腔内にあって外観上分かりにくい場合もある。通常は腫瘤による外観の問題を呈するにとどまるが、経過中に内部に感染や出血を起こすことがあり、発熱や疼痛を生ずる。腸管膜や後腹膜の腹部病変では急性腹症を呈して発症する。頸部や縦隔の病変では気道を圧迫し呼吸困難を呈し、気道確保、呼吸管理などを要する重症管理が必要となることもある。一方、リンパ管腫症の症状は病変の浸潤部位による。胸壁や縦隔の病変では、乳び胸水、血胸、心嚢水、息切れ、咳、喘鳴、呼吸困難などを認める。骨病変は頭蓋骨から脊椎、骨盤、四肢骨と全身に骨溶解を生じ、初期は無症状であるが、進行すると骨痛、病的骨折や骨溶解による脚長差や欠損などの様々な症状を呈する。また腹水や脾臓病変、血小板減少や凝固能の異常、リンパ漏、リンパ浮腫等など多彩な症状を呈する。

治療

 リンパ管腫に対しては外科的切除、硬化療法(ピシバニール、ブレオマイシン、高濃度アルコール、高濃度糖水、フィブリン糊等)、抗癌剤(ビンクリスチン等)、インターフェロン療法、ステロイド療法、レーザー焼灼法などが行われる。リンパ管腫症に対して標準的治療はない。局所病変に対しては、外科的切除や放射線治療、硬化療法が選択となる場合があるが、基本的には内科的療法(インターフェロンα、プロプラノロール、抗癌剤(ビンクリスチンなど)、ビスフォスフォネート、オクトレオチドなど)が行われる。リンパ液の喪失が重度の場合には高カロリー輸液、中鎖脂肪酸食、高タンパク食など栄養療法も行う場合がある。また種々の症状に対して対症的に外科的治療(胸膜の癒着療法や胸管結紮等)や放射線療法が行われることがある。

予後

 リンパ管腫・リンパ管腫症ともに良性疾患に分類される。リンパ管腫の病変は範囲を拡大せず、病変を完全に消失させずとも特に症状を認めない場合もある。治療により約80%は満足のいく結果(消失もしくは縮小して生活に支障をきたさない)を得られるが、一部には外観の問題、気道狭窄などの機能的問題を解決できず不自由な生活を余儀なくされている。一方リンパ管腫症は突然の発症にて重症管理を要することもある。特に胸部病変、乳糜胸水を呈する場合には予後不良であり、15年生存率が50%程度である(全国調査より)。リンパ管腫の重症例、リンパ管腫症の多くに対しては確実に有効な良い治療法がないのが現状である。
:バージョン1.0
更新日
:2015年3月31日
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