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腎静脈血栓症

じんじょうみゃくけっせんしょう

Renal vein thrombosis; RVT

告示番 号13
疾病名腎静脈血栓症
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概念・定義

腎静脈血栓症は,腎静脈内の血栓形成が生じる病態である。

病因・病態

種々の病態が腎静脈内血栓形成を引き起こす(表)。原因としては血液の過凝固状態,血流の停滞, 外部よりの圧迫などがある。成人ではGrawitz腫瘍に伴うものの頻度が最も多い。小児ではネフローゼ症候群に伴うものが最多である。 ネフローゼ症候群では,循環血液量減少,過凝固状態,静脈内皮障害などいくつもの血栓性要因が重なっている。

表 腎静脈血栓症の原因

1.腎腫瘍
 Grawitz腫瘍
2.周囲よりの腎静脈圧迫
 後腹膜線維症,腹部大動脈瘤など
3.過凝固状態
 (ア)先天性
  ①アンチトロンビンIII欠乏症
  ②プロテインS欠乏症
  ③プロテインC欠乏症
  など
 (イ)後天性
  ①ネフローゼ症候群
  ②抗リン脂質抗体症候群
  ③敗血症
  ④経口避妊薬服用
  など
4.循環血液:量減少
 (ア)脱水
 (イ)出血
  など
5.下大静脈よりの血栓の進展
6.腎移植後拒絶反応
7.その他

臨床所見

RVTには急性型と慢性型があり,急性型の頻度は低いが,突然始まる強い腰背部痛,肉眼的血尿臨床症状を訴えることが多い。また,腎が腫大するため背部に圧痛を認める。急性型は比較的若年に多くみられる。
慢性型では緩徐な血栓形成のため代償的に側副血行路が発達し,症状を欠くのが一般的である。下大静脈血栓症にまで進展すればNSの程度に比し下肢の浮腫が起こりやすくなる。特に他覚所見も認めない。

診断

上述の臨床所見によって疑い,画像検査によって腎静脈内に血栓を証明することにより確定診断する。
 検査所見として,急性型では検尿で血尿,タンパク尿を認める。腎機能も一時的に低下する。超音波などの画像診断では血栓側に腫大した腎を認める。慢性型ではRVTそのものによる検査所見の異常はほとんどない。血尿の頻度も低く,腎の腫大もなく,腎機能の低下も認めないのが一般的である。
 画像検査として,従来は腎静脈造影法がgolden standardとされてきた。しかし,これは侵襲が大きいうえ,血栓の乖離による肺塞栓症などの合併症の危険を伴うことが知られ, 最近では侵襲が比較的軽微で,解像力の高い画像診断が利用可能となっている。カラードプラーエコーは深部静脈血栓症に汎用されている。腎臓は深部臓器であり,肥満者などで描出困難例もあるが熟練した技師であれば高率に描出可能であり,侵襲もなくRVTの診断に有用である(1)。
造影CTは腎機能障害のある場合には造影剤腎症に留意する必要があるが有用である。最近はマルチスライスCTが普及しており,腎静脈を立体画像として観察することが可能であり,ごく短時間で撮影できることから,乳幼児にも有用である(2, 3)。
MRIは解像度が良好であり,放射線被曝の問題がないという利点がある一方, 時間がかかること, 腎機能障害があるときにはガドリニウム造影剤は全身性線維症の危険があることからやや有用性に欠ける(4)。慢性腎臓病(CKD)ステージ4, 5ではMRAは避けるべきとされている。

治療

RVTの治療として外科的血栓除去術は原則として行われない。慢性型では既に側副血行路が発達している場合が多く,血栓を除去しても腎機能回復などの利点はない。急性型でも血行が再建されない,再発するなど効果は一定でない(5)。
 抗凝固療法は血栓の拡大進展防止,内因性の線溶系による静脈の再開通促進,これを通しての肺塞栓防止などを目的とする。初期にはヘパリンが使用されるが,最近では出血しにくい低分子ヘパリンが使用されることが多い(6)。血栓が消失後は再発を防ぐために経口抗凝固薬であるワーファリンに切り替える。頻回にプロトロンビン時間を測定し,INR1.5-2.0となるよう投与量を調節する。
 抗凝固療法と線溶療法の併用も有効であるが,出血性合併症の危険が増すため,その適応は血栓が下大静脈まで進展し,肺梗塞などの危険が高いとき,両側性RVT,ヘパリンによっても改善がないときなどに限定される(7-9)。線溶薬としてはウロキナーゼやTPA(tissue plasminogen activator)が使用される。ジピリダモール,チクロピジン,最近開発されたクロピドグレルなど抗血小板薬も血栓防止に有効である。
 その他,最も重大な合併症は肺塞栓症の予防には,下大静脈フィルターが有用である。

参考文献

1) Helenon O, Correas JM, Chabriais J, et al. Renal vascular Dopplerimaging:clinical benefits of power mode. Radiographics 18:1441-1454,1998
2) Phonsombat S, Stoller ML. Images in clinical medicine. Bilateral renal-vein thrombosis associated with the nephrotic syndrome. N Engl J Med 354:1402, 2006
3) Bashir R, et al. Renal vein thrombosis: a case report. Angiology 58:640-643, 2007
4) Jalandhara N, Arora R, Batuman V. Nephrogenic systemic fibrosis and gadrinium-containing radiological contrast agents:an update. Clin Pharmacol Ther 89: 920-923, 2011
5) Duffy JL, Letteri J, Clinque T, et al. Renal vein thrombosis and the nephrotic syndrome. Report of two cases with successful treatment of one. Am J Med 54:663-672, 1973
6) Wu CH, Ko SF, Lee CH, et al. Successful outpatient treatment of renal vein thrombosis by low-molecular weight heparins in 3 patients with nephrotic syndrome. Clin Nephrol 65:433-440, 2006
7) Morrissey EC, McDonald BR, Rabetoy GM. Resolution of proteinuria secondary to bilateral renal vein thrombosis after treatment with systemic thrombolytic therapy. Am J Kidney Dis 29:615-619, 1997
8) Hussein M, Mooij J, Khan H, et al. Renal vein thrombosis, diagnosis and treatment. Nephrol Dial Transplant 14:245-247, 1999
9) Janda SP. Bilateral renal vein thrombosis and pulmonary embolism secondary to membranous glomerulonephritis treated with percutaneous catheter thrombectomy and localized thrombolytic therapy. Indian J Nephrol 20:152-155, 2010
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会
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腎機能障害が進行し、身長が-2.5SD以下の場合でがつ成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
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