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膜性増殖性糸球体腎炎

まくせいぞうしょくせいしきゅうたいじんえん

Membranoproliferative glomerulonephritis; MPGN

告示番 号37
疾病名膜性増殖性糸球体腎炎
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概念・定義

膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN)は,病理組織所見上,メサンギウム細胞増殖と基質の増加,糸球体係蹄壁の肥厚により血管腔の狭小化を呈する慢性糸球体腎炎である。原因不明の一次性MPGNと,様々な原因によりMPGNに類似した組織像を呈する二次性MPGNがある。
 病理学的に,びまん性のメサンギウム細胞増殖と基質の増加,糸球体毛細血管係蹄の二重化および,内皮細胞下とメサンギウム領域への免疫複合体の沈着,内皮下腔へのメサンギウム細胞の間入などの特徴を有し,臨床的に持続性の低補体血症を認める。電顕的に,高電子密度沈着物の存在部位より,Ⅰ型(内皮下沈着物),II型(基底膜内沈着物),III型 (内皮下沈着物+上皮下沈着物+基底膜内沈着物)に分類されていたがII型MPGNは,DDD(densedepositdisease)とも呼ばれ補体制御因子,特にfactor Hの機能異常が発症に関与していることが最近明らかになり,臨床像も異なる点が多い。WHO分類(1995年)ではⅠ型,III型とは,別個の疾患ととらえられており,II型MPGNは代謝性腎疾患に分類されている。

疫学

MPGNはすべての年齢層にみられるが一次性MPGNは小児,若年成人に多い。我が国の腎生検症例のうちMPGNと診断されるのは10%以下で,近年減少傾向にある。Ⅰ型の頻度が高く,MPGNの80-90%を占める。II型は我が国ではまれである。中高齢者に発症するMPGNは圧倒的に二次性のもので,原因は多岐にわたる(表1)。

表1 二次性膜性増殖性糸球体腎炎の原因となる疾患

・感染症
 B型肝炎,C型肝炎,HIV,EBウイルス,パルボウイルス,マイコプラズマ,マラリア,
 ブルセラ,住血吸虫,らい病,感染性心内膜炎,膿瘍,シヤント腎炎など
・ 自己免疫疾患
 クリオグロブリン血症,全身性エリテマトーデス,先天性補体欠損症,Sjögren症候群,強皮症
・悪性腫瘍
 白血病,リンパ腫 固形腫瘍,サラセミア,L/H鎖沈着症,鎌状赤血球症,マクログロブリン血症
・慢性肝疾患
 慢性肝炎,肝硬変,胆道閉鎖症,Wilson病
・代謝疾患,その他
 α1アンチトリプシン欠損症,部分的リポジストロフィ,溶血性尿毒症症候群,移植後,
 嚢胞性線維症,薬剤,サルコイドーシスなど

病因

原因としては細菌やウイルス感染などが考えられるが,大多数の患者において不明である。これを特発性(原発性)腎炎とよぶ。持続的な抗原刺激による免疫複合体の沈着と補体の活性化が発症に関与していることが示唆され,多くの患者で補体活性化因子である様々なnephritic factor (NeF)が血清中に検出されることが知られている (1)。C3NeFは,副経路のC3 convertase (C3bBb)に対する自己抗体であり,C4NeFは古典経路のC3 convertase (C4b2a)に対する自己抗体である。C3NeFはC3bBbと結合し,C3活性制御因子であるH因子,1因子の働きを阻止するためC3が持続的に活性化する。
一方,二次性のMPGNの発症は原疾患により,原因は異なるがループス腎炎や肝炎ウイルスなど既知の抗原により免疫複合体を形成し,糸球体に沈着する群,thrombotic microangiopathy (TMA)や,慢性移植糸球体症に代表される,内皮細胞が直接障害を受ける群,パラプロテイン血症に関連した異常タンパクが沈着する群に分けられる。

臨床症状

一次性MPGNI型,III型では臨床症状,検査成績はほぼ同じであり,タンパク尿血尿高血圧,腎機能低下などがみられる。検査成績では補体の低下が特徴的で,診断時に80-95%に低補体血症を認める (1)。
 約50%でネフローゼ症候群を呈し,小児ネフローゼ症候群の患者の6~9%にみられる(2)。急性腎炎症候群として発症する例が10-20%みられ急性上気道炎が初発症状であることがあるため,溶連菌感染後急性糸球体腎炎との鑑別が問題となる。尿異常と低補体が3カ月以上持続する場合は腎生検による判別が必要となる。
 一方,わが国では学校検尿や医療機関受診時に無症候性血尿・蛋白尿として偶然発見される場合も多い。

診断と鑑別診断

確定診断は腎生検組織によりなされる。光顕,蛍光,電顕像など各病型の特徴を表2に示す。

1)検体検査
 血液検査は正常な場合が多いが,急性腎炎型では,貧血,腎機能障害,ネフローゼ症候群を呈することがある。低補体血症が特徴的にみられ,2か月以上持続することが多い。I型において,C3はC4に比べ診断時にはしばしば低下し,経過観察中にさらに低下するが,最終的に正常化する。C3はII型でより頻繁に,また重度に低下する。III型ではC3は低下するがC4は正常である。
まれに血清補体値が正常な場合がある。急性糸球体腎炎やループス腎炎との鑑別が重要となり,急性腎炎症候群で発症し8週以上低補体血症が持続するときは,本症を疑う。
 C3NeFは,II型患者の70~80%において,またI型の約30%の患者において検出しうる。

2)病理診断

MPGNI型の光学顕微鏡での基本像は,メサンギウム細胞増殖と基質の増加,糸球体係蹄の肥厚である。糸球体病変は通常,びまん性,全節性にみられ,増殖性変化が強い場合には分葉化を呈する。これらの基本像に加えて,糸球体係蹄内への炎症細胞浸潤,細胞性半月体など多彩な組織像がみられる。免疫蛍光抗体染色ではC3が糸球体係蹄とメサンギウム領域に穎粒状に沈着する。
電子顕微鏡では,内皮下腔の開大と,新生基底膜の形成による基底膜の二重化が明らかで,開大した内皮下腔に,沈着物やメサンギウム細胞の侵入(メサンギウム間入,mesangial interposition: MI)が認められる (1, 2)。
 MPGNIII型はI型の所見に上皮下沈着物の存在が加わった像であり,さらに基底膜内に沈着物がみられるが,II型にみられる沈着物より電子密度は低く,分布は非連続的である。II型では糸球体基底膜内に電子密度の高い沈着物がリボン状にみられ,Dense depost disease(DDD)として,独立した疾患として扱われている。メサンギウム細胞の増殖や基質の増加は軽微なことが多い(3)。PAM染色を施した電子顕微鏡標本を観察すると,II型では基底膜緻密層の連続性は保たれているのに対し,III型では基底膜内に存在する非好銀性の沈着物により,基底膜のlamina densaが断片化,非薄化し,連続性がみられないことで区別される(4)。I,III型とII型を鑑別するうえで重要な点は,II型ではC3のみが基底膜係蹄壁やメサンギウム領域に染色され,免疫グロブリンが染色されないことである。
 これらの変化が得られた糸球体の80%未満(あるいは糸球体の一部)にみられるものを巣状(分節型)MPGNとよび,症状は軽く,経過も良好で,MPGNの初期像と考えられている(5)。

表2 膜性増殖性糸球体腎炎の各病型の特徴

I型III型II型
頻度70~90%15~20%5%
低補体血症C3→~↓ C4↓ CH50↓C3↓ C4→ CH50↓C3↓ C4→ CH50↓
補体経路古典経路古典経路 or 第二経路?第二経路
光学顕微鏡びまん性メサンギウム増殖と基質増生。糸球体係蹄の分葉化。基底膜の二重化。I型の所見。
スパイク形成や点刻像。
びまん性メサンギウム増殖と基質増生。分葉化は目立たない場合が多い。基底膜の二重化。
蛍光抗体C3,C1q,C4,IgG,IgMC3, IgG, IgMC3陽性。免疫グロブリンは陰性。
電顕所見内皮下とメサンギウム領域にEDDの沈着。上皮下と内皮下にEDDの沈着。基底膜にも存在。基底膜内の帯状のEDD沈着。メサンギウム領域,尿細管,ボーマン嚢基底膜にもEDDの沈着。

治療と予後

MPGNの治療法は確立していないが,ネフローゼ症候群を呈する場合は,ステロイドパルス療法や,ステロイド内服療法とともに抗血小板療薬や抗凝固療法を行う(6)。小児特発性ネフローゼ症候群の治療時に行われる通常のステロイド薬療法への反応がみられない場合が多く,このためステロイド薬の副作用をできるだけ少なくし,かつ長期にわたって治療を行うためにステロイド薬(プレドニゾロン)の40mg/m2隔日投与法が試みられ,成果が報告されている(2, 7, 8, 9)。
 シクロスポリンやミコフェノール酸モフェチル(MMF)などの免疫抑制薬が有効との報告も散見されるが(10, 11),小児MPGNに対する有効性は十分に検討されていない。二次性のMPGNに対しては,原則として原疾患の治療が優先される。

予後

MPGNの診断が確立された1970年代には予後の悪い腎炎とされ,約10年の経過でほぼ半数の患者が末期腎不全に移行するという報告もみられた。しかしその後プレドニゾロンの大量隔日投与法により約15%と減少し,さらにわが国においては学校検尿などで早期に発見され,早期より治療が開始されることにより,末期腎不全への移行はさらに減少傾向を示していると報告されている(2, 8)。
 最近わが国では,小児のMPGN患者自体が減少しているという報告が散見される。公衆衛生の改善や,感染症のコントロールなどが関連している可能性が考えられているが,原因は不明である(12)。

文献

1) Braun BC, Licht C, Strife CF. Membranoproliferative glomerulonephritis. In Avner ED, et al. (Eds). Pediatric nephrology, 6thed, Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkins, 783‐799,2009
2) 飯高喜久雄: 小児の膜性増殖性糸球体腎炎. 腎と透析59:373-377, 2005 
3) Iitaka K, Nakamura S, Moriya S, et al. Long-term follow-up of type II membranoproliferative glomerulonephritis in two children. Clin Exp Nephrol 7:58-62, 2003
4) Iitaka K, Moriya S, Nakamura S, et al. Long-term follow-up of type III membranoproliferative glomerulonephritis in children. Pediatr Nephrol l7:373-378, 2002
5) Iitaka K, Nakamura S, Moriya S, et al. Focal segmental membranoproliferative glomerulonephritis in children. Pediatr Nephrol18:1000-1004, 2003
6) 松尾清一, 他.厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会 ネフローゼ症候分診療指針.日腎会誌 53:78-122, 2011
7) Tarshish P, Bernstein J, Tobin JN, Edelmann CM Jr. Treatment of mesangiocapillary glomerulonephritis with alternate-day prednisone--a report of the International Study of Kidney Disease in Children. Pediatr Nephrol 6::123-130, 1992
8) Iitaka K, Ishidate T, Hojo M, et al. Idiopathic membranoproliferative glomerulonephritis in Japanese children. Pediatr Nephrol 9:272-277, 1995
9) Levin A. Management of membranoproliferative glomerulonephritis: evidence-based recommendations. Kidney lnt55(Suppl70):S41-S46, 1999
10) Bagheri N, Nemati E, Rahbar K, et al. Cyclosporine in the treatment of membranoproliferative glomerulonephritis. Arch Iran Med 11:26-29, 2006
11) Ito S, Tsutsumi A, Inaba A, et al. Efficacy of mycophenolate mofetil for steroid and cyclosporine resistant membranoproliferative glomerulonephritis type I. Pediatr Nephrol 24:1593-1594, 2009
12) Iitaka K, Nakamura S, Moriya S et al. Hypocomplementemia and membranoproliferative glomeruloneophritis in children. Clin Exp Nephrol 9:31-33, 2005
13)日本腎臓学会 編.CKD診療ガイドライン2013. 東京医学社, 東京, 2013
14)日本腎臓学会 編.CKD診療ガイドライン2009. 東京医学社, 東京, 2009
15)IgA 腎症分科会. IgA 腎症診療指針(第3版). 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 進行性腎障害に関する調査研究班報告.日腎会誌2011;53:123-135.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会
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