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エプスタイン(Epstein)症候群

えぷすたいんしょうこうぐん

Epstein syndrome

告示番 号30
疾病名エプスタイン症候群
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概念・定義

Epstein症候群は,進行性の腎炎,軽度の難聴,巨大血小板の出現を伴う血小板減少症の三徴を呈する症候群であり,Alport症候群との類似点から,遺伝性腎疾患の一つとされている(1)。
同様に三徴候を呈するFechtner症候群では穎粒球内にDöhle様封入体が認められるのに対して, Epstein症候群では封入体が認められないという点で両症候群は鑑別される。
家系分析より,責任遺伝子は22q11-q13に存在することが報告されnon-muscle myosin heavy chain typeIIA(NMMHC-IIA)をコードするMYH9遺伝子が見いだされた。
この遺伝子は巨大血小板を伴う血小板減少症を共通発現症状とするEpstein症候群,Fechtner症候群とともに,May-Hegglin異常, Sebastian症候群の責任遺伝子でもある。MYH9異常症のうちMay-Hegglin異常とSebastian症候群は顆粒球封入体の形態の違いによって区別され,これら2つの疾患では腎症状は認められないとされている。

病因・病態

比較的まれな疾患であり,世界でMHY9異常症は100家系程度の報告がある。Epstein症候群は、さらに思春期に腎不全にいたるもの(2),中年期以降に腎不全にいたるものが存在する。本邦での予備疫学調査でも50家系以上の症例が存在する。常染色体優性遺伝であり、透析あるいは腎移植により妊孕性もあるため, 今後患者数は増加していくものと考えられる。
Epstein症候群,Fechtner症候群,May-Hegglin異常,Sebastian症候群の4疾患すべての原因遺伝子がMHY9であることが明らかになり,これらはMYH9異常症として一連の疾患群と考えられるようになった(2, 3)。常染色体優性遺伝性疾患として知られているが約20%の症例は孤発例である。
MYH9異常症では,末梢血血液像で穎粒球にMay-Hegglin封入体が検出されるか否かが疾患分類の基準の一つとなっており,Fechtner症候群ではMay-Hegglin封入体が検出されEpstein症候群では検出されないことが鑑別の基準となっている。
また,Epstein症候群とFechtner症候群では腎不全があり,May-Hegglin異常とSebastian症候群では腎不全はないことも鑑別の基準にあげられるが,実際は診断された年齢などにより,同一家系にこれらの疾患が混在することも多く区別することが難しい。
病因が共通の遺伝子による異常であることから,最近では,Epstein症候群を含むこれらの4疾患はMYH9異常症としてまとめ,種々の表現型があると解釈する方がよいとの考えが優勢となっている。
Epstein症候群とFechtner症候群における感音性難聴と白内障の病理は不明である。腎病態についてはその主体は糸球体上皮細胞障害であり,糸球体基底膜疾患であるAlport症候群とは全く異なる。IV型コラーゲンα鎖染色は正常であり,電子顕微鏡では糸球体基底膜の菲薄化が観察される。
腎障害発症の機序については,2008年にKOPPらがアフリカ系アメリカ人における解析からMYH9が巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)の発症に関与することを報告し (4),その後,日本におけるEpstein症候群例の解析から,糸球体上皮細胞におけるMYH9遺伝子発現タンパクであるNMMHC-IIAの発現の低下が確認されている(5)。このことによりEpstein症候群においても糸球体上皮細胞のMYH9異常がFSGSの発症に関与する可能性が示された。

診断と鑑別診断

Epstein症候群は,腎障害,難聴,白内障の3症状の一部と,巨大血小板を伴う血小板減少症,and/or白血球封入体の存在するものを指し,Alport症候群類縁疾患として提示されてきた。
臨床的に進行性の腎炎, 軽度の難聴, 巨大血小板の出現を伴う血小板減少症の3徴により診断する。MYH9遺伝子解析により、Epstein症候群、 May-Hegglin異常、Sebastian症候群の正確な鑑別が可能である。また,抗NMMHC-IIA抗体を用いた免疫蛍光染色が客観的で明確なMYH9異常症の新規鑑別診断法となっている(6)。正常穎粒球ではミオシン重鎖は細胞質全体にびまん性に存在するが,MYH9異常症穎粒球ではMay-Giemsa染色にて観察される封入体と同様な形態で斑状に存在する(5)。

治療と予後

Epstein症候群において,血小板減少症による出血傾向は一般に軽微である。腎障害の程度は血尿を単独で認めるのみの症例から腎不全まで様々であるが,108例のMYH9異常症の集計では,0.5g/日以上のタンパク尿は25%に認められ,その73%は腎不全に移行しており,平均移行年齢は27歳と報告されている。タンパク尿出現後の腎機能障害の進展は比較的早い(7)。
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)がタンパク尿の減少に有効であるがその機序としては,糸球体内圧の低下作用のほかに,MYH9遺伝子発現タンパクが発現する糸球体上皮細胞の構造保護に直接的に作用する機序も想定されている。

参考文献

1) Epstein CJ, Sahud MA, Piel CF, et al. Hereditary macrothrombocytopathia, nephritis and deafness. Am J Med75: 299-310, 1972
2) Heath KE, Campos-Barros A, Toren A, et al. Nonmuscle myosin heavy chain IIA mutations define a spectrum of autosomal dominant macrothrombocytopenias: May-Hegglin anomaly and Fechtner, Sebastian, Epstein, and Alport-like syndromes. Am J Hum Genet 69:1033-1045, 2001
3) Seri M, Pecci A, Di Bari F, et al. MYH9-related disease: May-Hegglin anomaly, Sebastian syndrome, Fechtner syndrome, and Epstein syndrome are not distinct entities but represent a variable expression of a single illness. Medicine (Baltimore) 82:203-215, 2003
4) Kopp JB, Smith MW, Nelson GW, et al. MYH9 is a major-effect risk gene for focal segmental glomerulosclerosis. Nat Genet 40:1175-1184, 2008.
5) Sekine T, Konno M, Sasaki S, et al: Patients with Epstein-Fechtner syndrome owing to MYH9 R702 mutations develop progressive proteinuric renal disease. Kidney Int78:207-214, 2010.
6) Kunishima S, et al: Immunofluorescence analysis of neutrophil nonmuscle myosin heavy chain–A in MYH9 disorders: association of subcellular localization with MYH9 mutations. Lab Invest 83:115-122, 2003
7) Pecci A, Granata A, Fiore CE, Balduini CL. Renin-angiotensin system blockade is effective in reducing proteinuria of patients with progressive nephropathy caused by MYH9 mutations (Fechtner-Epstein syndrome). Nephrol Dial Transplant 23:2690-2692, 2008
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会
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