46

ロウ(Lowe)症候群

ろうしょうこうぐん

Lowe syndrome; oculocerebrorenal syndrome of Lowe; OCRL

告示番 号46
疾病名ロウ症候群
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概念・定義

本症は眼症状,中枢神経症状,腎尿細管機能障害を主徴とし,1952年にLoweらにより報告された遺伝性疾患である(1)。近年は,oculocerebrorenal syndrome of Lowe (OCRL) (MIM309000)とも呼ばれている。
X染色体劣性遺伝疾患であり,男児10万人に数人の発症とされるが,正確な発症頻度や患者数は不明である(2)。1982年の我が国の尿細管性アシドーシス(RTA)の全国調査では,RTAの約1/3が本症によるものであった(3)。
また,まれではあるが,X染色体と常染色体の間における均衡転座による軽症女児例の報告もあるため,女児であっても本症を除外すべきではない。

病因

本症の原因として,X染色体長腕のXq25-26.1に24エクソンからなる責任遺伝子OCRL1(MIM300535)が同定されている(4, 5)。
そのタンパクOCRL1はtypeII phosphatidyl inositol bisphosphate (PtdIns4, 5P2)5'-phosphataseとして生体内で生理活性分子として働き,イノシトールリン脂質を脱リン酸化する酵素活性をもち,それにより細胞局所でイノシトールリン脂質のレベルを調節して膜輸送や細胞のアポトーシス,細胞骨格制御など,多様な細胞機能の調節に関与すると考えられている(6-8)。
本症では,線維芽細胞を用いた解析により,OCRL1の脱リン酸化酵素活性が低下し,イノシトールリン脂質が蓄積していることがわかっている(9)。
しかし,遺伝子発現は様々な臓器に普遍的にみられるにもかかわらず臨床上問題となる標的臓器が限られることや,酵素活性欠損と様々な臨床症状との詳細な関連については,いまだ不明である。

診断

OCRL1遺伝子変異または皮膚培養線維芽細胞などを用いたOCRL1活性低下を証明する。
OCRL1遺伝子変異はDent病でもみられるがその変異好発部位は異なり,Lowe症候群ではエクソン9-22に多発し多くはprivate mutationでありhotspotはない。変異の種類と臨床像との間に明らかな相関はないとされる。
また,保因者を酵素診断することはできないが,10歳以上の保因者女性の9割以上に水晶体の微細白濁がみられるとされ,遺伝子診断とあわせ,保因者診断に有用である。なお,保因者では尿細管障害などの臨床症状はみられない。

臨床所見

1) 眼症状:水晶体上皮の遊走障害をきたすため,両側性の先天性白内障はほぼ必発である。シュレム管の形成障害による先天性緑内障(牛眼)もみられる。そのほか,角膜変性(線維組織増生),斜視,眼振,小眼球症などの異常がみられる。
2) 神経症状:認知障害,精神発達遅滞,痙攣,行動異常,筋緊張低下などがみられる。認知障害・発達遅滞の程度は個人差が大きいが,大半は軽~中程度の知能指数となる。痙攣は約半数にみられる。出生時から筋緊張低下がありfloppy infantとなり,深部腱反射は減弱する。
3) 腎症状:新生児早期からの近位尿細管機能障害および10歳代からの糸球体障害がみられる。尿細管障害ではいわゆるFanconi症候群を呈し,近位型RTAや汎アミノ酸尿,糖尿などをきたし,体重増加不良の一因となる。糸球体障害は緩徐に進行していく。
4) その他:近位型RTAによる低リン血症・代謝性アシドーシスや筋緊張低下により,くる病・骨軟化症が発生する。出生時の体格は正常範囲内だが最終身長は低くなる。前額の突出や眼窩のくぼみなど,特徴的な顔貌を呈する。関節病変(関節腫脹,関節炎)や線維腫,歯嚢胞,二重歯列,停留睾丸などもみられる。

検査所見

1) 近位型RTAにより血中HCO3-低下,低カルシウム血症,低リン血症,ALP上昇,低カルニチン血症などがみられる。10歳以降,腎機能の低下に伴いBUNやCrの上昇がみられるようになり,進行に従い1.25-(OH)2ビタミンDも低下する。本症では筋肉量が少ないため,腎障害の程度に比してCr上昇の程度は小さい。そのほか,筋原性にトランスアミナーゼ,LDH,CKの軽度上昇がみられる。
2) 尿検査では,尿量の増加,低比重尿,タンパク尿(アルブミン尿および尿細管由来低分子タンパク尿),汎アミノ酸尿,糖尿,高カルシウム尿,高リン酸尿などを呈する。
3) 画像検査では,長管骨X線検査で,杯状骨端・骨皮質の菲薄化などのくる病所見を呈する。頭部MRIで脳室周囲白質の微細嚢胞がみられるが,臨床症状とは相関しない。
4) 腎病理所見では,尿細管上皮の萎縮と間質の線維化,年長例では糸球体基底膜の肥厚,足細胞の癒合,硝子化が出現し,腎不全に陥った例では腎髄質の石灰化がみられる。

治療・予後

治療は,対症療法が主体である。眼症状に対しては外科的治療が行われる。神経症状では,けいれんに対しては抗けいれん薬を使用し,筋力低下に対しては理学療法を行う。
Fanconi症候群に対する治療は,別項を参照されたい。腎不全が,予後を規定する大きな因子であるが,透析導入や腎移植に対する統一的な見解はない。

参考文献

1) Lowe CU, Terrey M, Maclachlan EA. Organic-aciduria, decreased renal ammonia production, hydrophthalmos, and mental retardation; a clinical entity. AMA Am J Dis Child 83:164-84, 1952
2) Nussbaum RL,Suchy SF:The Oculocerebrorenal Syndrome of Lowe (LoweSyndrome). In: Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease, 8th ed (ed by Scriver CR, et al), p6257-6266, McGraw‐Hill, NewYork, 2001.
3) Kitagawa T, Owada M: A clinical survey of renal tubular acidosis in Japan. In: Coupled Transport in Nephron (ed by Hoshi T), p220-229, Miura Medical Research Foundation, Tokyo, 1984.
4) Hodgson SV, Heckmatt JZ, Hughes E, Crolla JA, Dubowitz V, Bobrow M. A balanced de novo X/autosome translocation in a girl with manifestations of Lowe syndrome. Am J Med Genet 23: 837-47, 1986
5) Attree O, Olivos IM, Okabe I, et al. The Lowe's oculocerebrorenal syndrome gene encodes a protein highly homologous to inositol polyphosphate-5-phosphatase. Nature 358 (6383):239-42, 1992
6) Choudhury R, Diao A, Zhang F, et al. Lowe syndrome protein OCRL1 interacts with clathrin and regulates protein trafficking between endosomes and the trans-Golgi network. Mol Biol Cell 16: 3467-79, 2005
7) Faucherre A, Desbois P, Nagano F, et al. Lowe syndrome protein Ocrl1 is translocated to membrane ruffles upon Rac GTPase activation: a new perspective on Lowe syndrome pathophysiology. Hum Mol Genet 14: 1441-8, 2005
8) Vicinanza M, D'Angelo G, Di Campli A, De Matteis MA. Phosphoinositides as regulators of membrane trafficking in health and disease. Cell Mol Life Sci 65: 2833-41, 2008
9) Zhang X, Hartz PA, Philip E, Racusen LC, Majerus PW. Cell lines from kidney proximal tubules of a patient with Lowe syndrome lack OCRL inositol polyphosphate 5-phosphatase and accumulate phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate. J Biol Chem 273:1574-82, 1998
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会
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