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多嚢胞性異形成腎

たのうほうせいいけいせいじん

Multicystic dysplastic kidney; MCDK

告示番 号7
疾病名多嚢胞性異形成腎
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概要

多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney:MCDK)は,嚢胞形成を主体とする異形成腎である。異形成腎とは,後腎間葉組織や尿管芽の分化が異常で不完全なものを指し,線維筋組織がprimitive duct (原始集合管)を取り巻くという,特徴的な組織像に基づいて診断される。MCDKでは,大小様々な嚢胞が多数存在し,嚢胞間に異形成組織がわずかに介在するのみで,基本的に無機能腎である(1)。正常な腎盂は形成されず,尿管も認められないか閉塞している。嚢胞は自然に退縮することが多い。通常片側性で発見されるが,両側性にも生じ,その場合Potter症候群となり致死的である。胎児エコーで発見される例が多く,頻度は出生4300例に1例と先天性腎尿路奇形の中では頻度が高い(2)。左側に多く,男児に多いとされるが,大きな差はない。

病因

本症の原因として,尿管芽と後腎間葉組織の相互作用の異常,尿路閉塞などの他,催奇形因子や遺伝子異常など様々な因子が考えられているが,明らかな嚢胞形成機序は不明である。

診断

確定診断は,厳密には病理組織学的に行われる。正常なネフロンは認められず,わずかに未分化な上皮細胞や primitive duct が認められる。しかし,大多数が保存的に経過観察される本症では,臨床経過および画像検査による診断が中心となる。超音波検査では,大小様々な嚢胞が描出され,嚢胞間には隔壁が存在する。正常な輝度を有する腎実質は認められない。核医学検査では,99mTc-DMSA (腎静態)シンチグラフィにより無機能腎を確認する。対側腎は通常,代償性に核種の摂取率が増大している。

臨床所見

胎児エコーで発見される例が多いが,乳児期以降に腹部腫瘤で発見されることもある。ただし,MCDKは自然退縮傾向があり,特に乳幼児期でその傾向が強い。一方対側腎は,無機能な異形成腎を代償するために肥大している。
 合併症として,対側の腎尿路異常が約1/3に認められる(3)。なかでも膀胱尿管逆流(VUR)が最も多く,尿路感染症の原因となる。排尿時膀胱尿道造影(VCUG)をスクリーニング検査として行うことに関して明確な指針はないが,否定的な報告も多い(4)。その他,水腎症,尿管瘤,低形成腎などがみられる。腎尿路以外では,内性器異常も合併し得る。高血圧は,決して頻度は高くないが,異形成腎からのレニン分泌や対側腎への過剰濾過などが原因となり合併する。Wilms腫瘍の合併報告があり,以前は腎摘出の根拠とされたが,現在では,悪性腫瘍の合併リスクが高いという明確なエビデンスはないとされる。

治療・予後

MCDKは自然退縮傾向があり,重篤な合併症の頻度も低いため,基本的方針は合併症および腎機能の経過観察である。超音波検査では,MCDKの退縮および対側腎肥大の評価を行う。VURがあり尿路感染症を繰り返すようであれば,機能的単腎のリスクを考慮して,抗菌薬の予防内服や外科的治療の適応につき慎重に検討する。過去に標準的に行われてきた患腎の摘出は、現在は一律には行われておらず、大多数は保存的に管理されている。腎機能予後は,対側腎に異常がなければ良好とされる。しかし正確な長期予後は不明であり,予後を明らかにするためにも長期の経過観察が望まれる(5)。

参考文献

1) 金子一成:多嚢胞性異形成腎.腎と透析54: 449-453, 2003.
2) Hains DS, Bates CM, Ingraham S, Schwaderer AL. Management and etiology of the unilateral multicystic dysplastic kidney: a review. Pediatr Nephrol. 24: 233-241, 2009.
3) Schreuder MF, Westland R, van Wijk JA. Unilateral multicystic dysplastic kidney: a meta-analysis of observational studies on the incidence, associated urinary tract malformations and the contralateral kidney. Nephrol Dial Transplant. 24: 1810-1818, 2009.
4) Ismaili K, Avni FE, Alexander M, et al. Routine voiding cystourethrography is of no value in neonates with unilateral multicystic dysplastic kidney.J Pediatr. 146: 759-763, 2005.
5) Mansoor O, Chandar J, Rodriguez MM, et al. Long-term risk of chronic kidney disease in unilateral multicystic dysplastic kidney. Pediar Nephrol 26: 597-603, 2011.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児腎臓病学会
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