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神経鞘腫

しんけいしょうしゅ

Neurinoma

告示番 号55
疾病名神経鞘腫
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定義

分化したシュワン細胞から構成され、生物学的には良性腫瘍(WHOグレードI)である。中枢神経系腫瘍としては頭蓋内や脊柱管内の末梢神経(脳神経や脊髄神経根)から発生する。末梢神経に連続する境界明瞭で被膜に覆われた腫瘤を形成し、核の棚状配列や細胞の粗密配列を特徴とする。

疫学

成人に多いが小児期にも発生する。日本脳神経外科学会による日本脳腫瘍統計によると、年齢別の頭蓋内の発生頻度は4歳未満には非常にまれで、5歳から14歳までは0.6%、15歳以後発生頻度は増加するが、15歳から29歳までは6.7%である。

症状

前庭神経に発生する前提神経鞘腫(従来聴神経鞘腫と呼ばれていたが、最近は発生母地から前庭神経鞘腫と呼ばれることが多い)と呼ばれ、その他の脳神経にも発生することがある。内耳道内の前庭神経に発生して増大すれば同側の蝸牛神経障害による聴力障害を初発症状とし、内耳道内で増大すれば同側の顔面神経麻痺を呈する。内耳道から小脳橋角部へ増大すれば、三叉神経障害や小脳・脳幹の症状を呈し、さらに増大すれば水頭症を合併する。三叉神経に発生すれば、顔面の知覚などの症状をきたす。神経線維腫症1型、2型で脊椎管内の脊髄神経根に発生しやすい神経鞘腫は、脊髄外から脊髄を圧迫して脊髄症状を呈する。神経線維腫症2型では両側の聴神経腫瘍が特徴的である。

診断

前庭神経に発生した場合は、上記の症状に加え、内耳道の拡大を伴う小脳橋角部の腫瘍の画像所見を呈し、脳実質との境界は明瞭である。30歳未満に発生する一側の聴神経鞘腫は神経線維腫症2型の可能性がある。摘出した標本の病理組織検査で診断を確定する。

治療、予後

腫瘍の摘出が第一選択である。組織学的に良性なので全摘出できれば治癒が期待できるが、聴覚障害は回復しにくく、顔面神経麻痺や周囲の脳神経障害や脳幹、小脳の障害を合併することもある。ある程度の大きさの腫瘍であれば、定位的放射線治療やγナイフが有効な場合も多い。
神経線維腫症2型に発生する両側聴神経腫瘍では、早期に治療を行っても神経症状が悪化しやすいことから、最近では聴力を温存するため腫瘍の摘出はできるだけ遅らせるとする報告がある。腫瘍の摘出に伴って発生しやすい聴力障害を避けるため、増大速度が速い聴神経腫瘍(1年間に1cm以上の腫瘍の増大)の場合は腫瘍側の有効聴力の消失するまで、あるいは腫瘍の増大によって脳幹症状の出現や水頭症の合併があるまで、保存的に経過を見ている。上記の条件にあえば、顔面神経障害が発生しないように慎重に摘出を行うとしている。また、神経線維腫症2型で脊髄神経根に神経鞘腫が多発性に発生した場合、疼痛のみでは手術適応にならず、感覚障害など神経症状を呈している腫瘍は摘出するとしている。

予後

小児の多数例の予後の報告はない。

文献

1)Committee of brain tumor registry of Japan(日本脳神経外科学会による日本脳腫瘍統計): Report of brain tumor registry of Japan (1969-1996) 11th edition, Neurologia medico-chirurgia: 43 (Supplement), 2003.
2) 太田富雄 総編集、川原信隆、西川 亮、野崎和彦、吉峰俊樹 編集:脳神経外科学 改訂11版、金芳堂、京都、2012.
3) 日本脳外科学会・日本病理学会編:脳腫瘍取扱い規約 第3版、金原出版、東京、2010.
4) Goodrich JT, Marion RW: 43. Neurofibromatosis. Keating RF, Goodrich JT, Packer RJ: Tumors of the pediatric central nervous system, second edition, Thieme, New York, 2013, pp445-466.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会、日本小児神経外科学会
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