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頭蓋咽頭腫

ずがいいんとうしゅ

Craniopharyngioma

告示番 号60
疾病名頭蓋咽頭腫
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定義

トルコ鞍上部に発生し嚢胞形成を伴う上皮性の良性腫瘍(WHOグレードI)である。ラトケ嚢胞由来とされ、組織学的にエナメル上皮腫型と乳頭型に分類でき、乳頭型は小児には少ない。

疫学

5歳未満の小児に発生する腫瘍の中では9.7%を占め、第4位の頻度である。日本脳神経外科学会による日本脳腫瘍統計の年齢別の発生頻度では、5歳まで4.2%、5歳から15歳まで15.7%、15歳から29歳まで14.7%であり、小児では10歳前後に発生しやすい。

症状

視覚障害あるいは尿崩症や成長障害などの内分泌障害で発症し、第三脳室へ進展すれば水頭症を合併して頭蓋内圧亢進症状を来す。側方や尾側(脳幹前面)に進展する場合は局所の圧迫症状を呈する。

診断

トルコ鞍部に発生する下垂体腺腫、胚細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫などの神経膠腫、ランゲルハンス組織球症、下垂体炎、ラトケ嚢胞との鑑別が必要である。頭蓋咽頭腫では尿崩症や成長障害を来しやすく、下垂体腺腫のように左右対象的な両側耳側半盲は来しにくい。画像所見では、トルコ鞍上部に発生して嚢胞、充実成分、石灰化を呈し、トルコ鞍内や第三脳室内にも進展する。MRIT1強調画像では低信号に、T2強調画像では高信号を呈し、嚢胞壁や充実成分の部分が造影効果を受ける。嚢胞内容は髄液に近い低信号から出血やコレステロールを反映する高信号までさまざまである。摘出標本から病理組織学的に確定診断する。

治療

腫瘍の摘出が第一選択である。周囲の組織とは境界明瞭に発育するので、全摘出すれば治癒が期待できるが、下垂体柄や視床下部、視神経・視交叉との癒着が強く、機能温存を考えれば全摘出が困難な例が多い。術後の内分泌の補充を行う前提で、腫瘍の全摘出を行うこともある。トルコ鞍上部に進展した腫瘍の摘出は開頭術で行うことが多いが、側方や尾側へ進展した場合は、二期的に摘出術を行うこともある。腫瘍の主座がトルコ鞍内の場合は蝶形骨洞経由で摘出を行う。視床下部への伸展・浸潤が約40%の例にみられるため、全摘出率は50%から60%に留まり、積極的な摘出を行えば全摘出率は向上するがこの部の障害を来す可能性がある。周囲の脳組織への浸潤があり、肉眼的に全摘出したと判断しても20%から40%に再発するとされる。
全摘出ができなかった場合の再発率は70%から90%と高いため、術後の放射線治療が行われることがあるが、視神経や視床下部への影響が危惧される。残存腫瘍に局所放射線治療(45Gyから50Gy)で10年生存率は85%から100%で、20年生存率が78%という報告がある。
腫瘍の嚢胞にオマヤリザバーを留置し、ブレオマイシンなどの抗がん剤を嚢胞内に注入する方法がある。この方法による治癒は難しく、嚢胞外に薬剤が漏出した場合の神経障害もある。
治療後は下垂体前葉機能障害(副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、甲状腺モホルモン、性腺刺激ホルモンなど)、後葉機能障害(尿崩症)、視床下部障害(肥満、温度感覚異常など)が増加し、80%以上の例で汎下垂体機能障害に対しホルモン補充療法が必要となる。また、記銘力障害など高次脳機能障害を認める例もある。副腎皮質ホルモンや抗利尿ホルモンを中心に内分泌補充を長期にわたって行う必要がある。これらのホルモン補充が十分でないと生命にかかわる状態も発生することがある。

予後

予後は手術治療と放射線治療を併用した最近の治療結果を上げる(文献2より引用)              
報告者 症例数 10年生存率
(全症例)
全摘出率 全摘出後
再発率
非全摘出後再発率
(放射線治療なし)
非全摘出+放射線
治療の10年生存率
Duffら,2000 121 記載なし 57% 18% 50% 非再発生存率90%
Linら,2008 31 96% 45% 43% 78% 100%
Pugetら,2007 95 記載なし 50% 36% 記載なし 記載なし
Strippら,2004 75 85% 59% 記載なし 記載なし 83%
Tomitaら,2005 54 90% 61% 27% 92% 記載なし
Vinchonら,2008 41 記載なし 25/41(61%) 24% 記載なし 記載なし

文献

  1. Committee of brain tumor registry of Japan(日本脳神経外科学会による日本脳腫瘍統計): Report of brain tumor registry of Japan (1969-1996) 11th edition, Neurologia medico-chirurgia: 43 (Supplement), 2003.
  2. 松谷雅生:§8 視神経・間脳・下垂体腫瘍、1. 頭蓋咽頭腫:横田 晃監修、山崎麻美、坂本博昭 編集:小児脳神経外科学、金芳堂、京都、2009、pp622-626.
  3. 日本脳外科学会・日本病理学会編:脳腫瘍取扱い規約 第3版、金原出版、東京、2010
  4. 太田富雄 総編集、川原信隆、西川 亮、野崎和彦、吉峰俊樹 編集:脳神経外科学 改訂11版、金芳堂、京都、2012.
  5. Keating RF, Goodrich JT, Packer RJ: Tumors of the pediatric central nervous system, second edition, Thieme, New York, 2013.
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会、日本小児神経外科学会
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