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悪性ラブドイド腫瘍

あくせいらぶどいどしゅよう

Malignant rhabdoid tumour

告示番 号4
疾病名悪性ラブドイド腫瘍
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概念・定義

本疾患は主に腎、肝、軟部組織、中枢神経など体のあらゆる部位に発生する腫瘍である。中枢神経と腎など複数に同時に発症することもある。腫瘍の発生母地といった病態については解明されていない。
1978年にBeckwithらによって、小児腎腫瘍の中で予後不良型として報告されmalignant rhabdoid tumor of the kidneyと命名された。その後、日本では悪性横紋筋肉腫様腫瘍と呼ばれていたが、最近では悪性ラブドイド腫瘍とされる。
組織学的には、類円形の腫大した核と細胞質に好酸性細胞質封入体を有する円形の ラブドイド細胞が特徴で、好酸性封入体は直径 10nm の中間径フィラメントのからなっている。1982年にGonzalez-Crussiらによって肝や軟部組織など腎外の組織から発生した症例が報告され、ついで1987年にBiggsらによって中枢神経の悪性ラブドイド腫瘍が、Atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT) として報告され、1993年にRorkeらによってAT/RTは疾患概念が確立された。1998年にVersteegeらが悪性ラブドイド腫瘍において22q11.23上に存在するhSNF5/INI-1遺伝子の変異を報告し、その後のsnf5/ini1ノックアウトマウスにおいてマウスラブドイド腫瘍の発生が報告され、hSNF5/INI-1遺伝子は癌抑制遺伝子とされ、この遺伝子の欠失・変異が悪性ラブドイド腫瘍の発症に関与していると考えられている。さらに、hSNF5/INI-1遺伝子の異常は腫瘍のみならず、約30%程度の症例でgermlineでの変異が報告され、その一部に家族性の発症を認めることが報告されている。

疫学

悪性ラブドイド腫瘍の多くは1歳未満の乳児期に発症し、大半の症例は2歳までに発症している。しかし、成人での発症の報告も散見される。
発生頻度に関する正確な報告はない。アメリカでは年間、中枢神経発症例 が約30例、中枢神経以外の発症例が約20例は存在すると推定されている。また、ドイツでは年間、中枢神経発症例 が約20例、中枢神経以外の発症例が約15例は存在すると推定される。したがって、発生頻度が人種間で同じであると仮定すれば、人口比率を考慮すると、日本でも年間で中枢神経発症例 が約20例、中枢神経以外の発症例が約15例と推定される。そのうち腎発症の悪性ラブドイド腫瘍は、年間3、4例である。
中枢神経系での発症部位は、報告によってまちまちであるが38%~65%は後頭蓋窩に、27%~62%が前頭葉を中心としたテント上に発生している。

病因

病因は不明であるか、hSNF5/INI-1遺伝子の異常が唯一の共通した異常であること、ノックアウトマウスにヒトの悪性ラブドイド腫瘍と同様の表現型を持つ腫瘍が発生することより、hSNF5/INI-1遺伝子の異常が発症に大きく関与すると考えられている。

症状

発症部位によって異なる。中枢神経の場合、脳圧亢進症状としての頭痛や嘔吐、意識障害やけいれん、麻痺などで発症する。発症時に髄膜播種を起こしている症例も見られる。腎や肝などの腹部発症例では、一般的に自覚症状は乏しく、腹部膨隆や腹部腫瘤を触知する場合がある。また、発熱や嘔吐といった消化器症状で発症することもある。

治療

アメリカやヨーロッパを中心に、外科手術、多剤併用化学療法と幹細胞移植を併用した大量化学療法、放射線療法を組み合わせた、治療が行われ、現在も臨床試験が行われている。しかし、いずれの臨床試験においても治療成績は十分ではなく、標準治療と考えられる治療は確定されていない状況である。    
アメリカのCOGではDose-Intensityを高めた化学療法が試され、薬剤の投与量を増やしたものの予後の改善がないばかりか、薬剤関連死亡例が報告され、化学療法の強度を弱めた治療を行わざるをえない状況である。COGでは腎原発のラブドイド腫瘍の4年生存率が28.5%で特に6か月未満の発症例の予後は悪く、その4年生存率は8.8%であると報告された。
AT/RTでは、外科手術後、髄液注射を併用した化学療法と放射線治療を行い、2年無増悪生存が53%と報告されている。なかでも完全摘出できた症例の予後は比較的良好である。しかし、髄膜播種のある症例や摘除できない症例の予後は非常に悪い。
今後、生物学的製剤や分子標的薬を導入した新たな治療戦略が必要であると考えられている。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
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