9

急性単球性白血病

きゅうせいたんきゅうせいはっけつびょう

Acute megakaryoblastic leukaemia

告示番 号75
疾病名急性単球性白血病
診断手引き、医療意見書等のダウンロードはこちら

概念・定義 Introduction

急性白血病は遺伝子変異により増殖能を獲得するとともに、分化能を失った幼若造血細胞(芽球)が自律的に増殖する造血器の悪性腫瘍疾患である。急性白血病のうち芽球の形質が骨髄系造血細胞への分化傾向を示すものを急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia: AML)というが、小児においては急性白血病の約25%がAMLである。AMLはWHO分類(第4版)にしたがって、原則として芽球が末梢血あるいは骨髄における全有核細胞数の20%以上を占める場合に診断される1)。FAB分類では骨髄または末梢血標本の染色所見および表面抗原検査により細分類されるが、WHO分類(第4版)ではこれらに加えてAMLに特異的な染色体異常・遺伝子変異の有無、抗がん剤・放射線治療歴の有無等に基づいて細分類される。


表1. 急性骨髄性白血病(AML)のFAB分類
M0急性骨髄性白血病、最小分化/最未分化型急性骨髄性白血病
M1成熟を伴わない急性骨髄性白血病/未分化型急性骨髄性白血病
M2成熟を伴う急性骨髄性白血病/分化型急性骨髄性白血病
M3急性前骨髄球性白血病
M4急性骨髄単球性白血病
M5急性単球性白血病
M6急性赤白血病
M7急性巨核芽球性白血病


表2. 急性骨髄性白血病(AML)のWHO分類(第4版)
特定の染色体異常・遺伝子変異を伴うAML
・ t(8;21)(q22;q22)/ RUNX1-RUNX1T1 を伴うAML
・ inv(16)(p13.1q22)あるいはt(16;16)(p13.1;q22)/ CBFB-MYH11 を伴うAML
・ t(15;17)(q22;q12)/ PML-RARA を伴うAML
・ t(9;11)(p22;q23)/ MLLT3-MLL を伴うAML
・ t(6;9)(p23;q34)/ DEK-NUP214 を伴うAML
・ inv(3)(q21q26.2)またはt(3;3)(q21;q26.2)/ RPN1-EVI1 を伴うAML
・ t(1;22)(p13;q13)/ RBM15-MKL1 を伴うAML
・ NPM1変異を伴うAML(暫定)
・ CEBPA変異を伴うAML(暫定)
骨髄異形成関連変化を伴うAML
治療関連骨髄系腫瘍
その他のAML
・ 成熟を伴わない急性骨髄性白血病/未分化型急性骨髄性白血病
・ 成熟を伴う急性骨髄性白血病/分化型急性骨髄性白血病
・ 急性骨髄単球性白血病
・ 急性単芽球性/単球性白血病
・ 急性赤白血病
・ 急性巨核芽球性白血病
・ 急性好塩基性白血病
・ 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症
骨髄肉腫/顆粒球肉腫
ダウン症に発症したAML
・ 一過性骨髄異常増殖症
・ ダウン症に発症したAML
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍

病因 Pathogenesis

原因は不明であるが、造血細胞に染色体異常・遺伝子変異を生じた結果、増殖能を獲得するとともに分化能を失った芽球が自律的に増殖してAMLを発症する2)。ダウン症などある種の先天性疾患においてAMLが発症する頻度が高いことが知られている。また、別の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療後にAMLを発症することもある。

疫学 Epidemiology

AMLは小児の急性白血病の約25%を占める。日本小児血液学会(現日本小児血液・がん学会)の疾患登録事業における解析によれば、2006年〜2010年の5年間で診断時20歳未満の小児におけるAMLは計891例登録されており、平均して年間178例の発症であった3)

臨床症状 Clinical manifestations

AMLの症状には、正常造血の抑制に基づくものと芽球の浸潤によるものとがある2)。正常造血の抑制では、貧血による全身倦怠感や動悸・息切れ、血小板減少による出血症状、正常白血球減少に伴う感染症状がある。急性前骨髄球性白血病(Acute promyelocytic leukemia: APL、FAB分類のM3)では播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併しやすく、出血症状が生じやすい。AML芽球はリンパ節、中枢神経系、肝臓、脾臓などに浸潤することがあり、それぞれリンパ節腫脹、頭痛や嘔気・嘔吐、肝脾腫などを認めることがある。特に単球系の形質を持つAML(FAB分類のM4やM5)では、歯肉腫脹や皮膚浸潤をしばしば認める。また、腫瘤形成するAMLもあり、骨髄肉腫/顆粒球肉腫と呼ばれる。白血病においては特異的な症状で発見されることは少なく、不特定の症状が長引くことが疾患を疑う契機になる。

診断 Diagnosis

治療

AMLの治療の主体は多剤併用化学療法であり、その中心を担う薬剤はシタラビン(Ara-C)とアントラサイクリン系抗がん剤である2)。これらの2剤を中心に用いた寛解導入療法と大量Ara-C療法を含む強化療法を計4~5コース程度行うのが標準的である。小児AMLで用いられているアントラサイクリンとしては、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンなどがあるが、その優劣については結論が出ていない。その他、Ara-Cとアントラサイクリン以外の第3の薬剤を併用することの意義も必ずしも明確ではないが、小児AMLにおいてはエトポシドなどが併用されることが多い。
 AMLでは前記多剤併用化学療法に加えて、一部の症例においては同種造血幹細胞移植が行われる。造血幹細胞移植の適応は、予後因子に基づいたリスク層別化によって決定される。すなわち、モノソミー7や5q-、t(16;21)(p11;q22)/ FUS-ERG、t(9;22)(q34;q11.2)/ BCR-ABL1陽性、FMS-like tyrosine kinase 3(以下FLT3)のinternal tandem duplication(FLT3-ITD)が陽性等予後不良な染色体異常や遺伝子変異がある場合や、初回寛解導入療法に対する治療反応性が不良であった場合、再発した場合などは、同種造血幹細胞移植の適応となる。
 APLでは、AMLに対する通常の多剤併用化学療法に加えて、全トランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が併用される。更に、APLでは強化療法後にATRAを用いた維持療法も行われる。APLの再発・難治例に対しては、ATRAと同様に分化誘導効果のある三酸化ヒ酸(ATO)が用いられることもある。
 ダウン症に発症したAMLでは、治療合併症が多い一方で、Ara-Cなどの抗がん剤に対する治療反応性が良好であることが知られており、通常の小児AMLよりも治療強度を減じた多剤併用化学療法が行われる。

予後

APLおよびダウン症に発症したAMLを除いた小児AML新規診断例の治療成績は、現在無イベント生存率が約60%、全生存率が約70%である4)。しかし、再発・難治例の治療成績は依然不良であり、全生存率は40%に満たない5)
 小児のAPLおよびダウン症に発症したAMLの治療成績は非常に良好であり、それぞれ80%以上の無イベント生存率が得られている6),7)。しかし、ダウン症例においても再発・難治例の予後は非常に不良であり、その生存率は30%に満たない8)

参考文献

1. Swerdlow SH, et al. WHO Classification of Tumors of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. IARC: Lyon 2008
2. Cooper TM, et al. Chapter 20. Acute Myeloid Leukemia, Myeloproliferative and Myelodysplastic Disorders. Principles and Practices of Pediatric Oncology. Pizzo PA. 6th ed. Lippincott Wiliams & Wilkins, a Wolters Kluwer business. 2011, 566-610.
3. Horibe K, Saito AM, Takimoto T, et al. Incidence and survival rates of hematological malignancies in Japanese children and adolescents (2006-2010): based on registry data from the Japanese Society of Pediatric Hematology. Int J Hematol 2013;98(1):74–88
4. Tsukimoto I, Tawa A, Horibe K, et al. Risk-stratified therapy and the intensive use of cytarabine improves the outcome in childhood acute myeloid leukemia: the AML99 trial from the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group. J Clin Oncol 2009;27(24):4007-4013
5. Kaspers GJL, Zimmermann M, Reinhardt D, et al. Improved outcome in pediatric relapsed acute myeloid leukemia: results of a randomized trial on liposomal daunorubicin by the International BFM Study Group. J Clin Oncol 2013;31(5):599-607
6. Imaizumi M, Tawa A, Hanada R, et al. Prospective study of a therapeutic regimen with all-trans retinoic acid and anthracyclines in combination of cytarabine in children with acute promyelocytic leukaemia: the Japanese childhood acute myeloid leukaemia cooperative study. Br J Haematol 2010;152(1):89-98
7. Kudo K, Kojima S, Tabuchi K, et al. Prospective study of a pirarubicin, intermediate-dose cytarabine, and etoposide regimen in children with Down syndrome and acute myeloid leukemia: the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group. J Clin Oncol 2007;25(34):5442-5447
8. Taga T, Saito AM, Kudo K, et al. Clinical characteristics and outcome of refractory/relapsed myeloid leukemia in children with Down syndrome. Blood2012;120(9):1810-1815
:バージョン1.1
更新日
:2015年6月23日
文責
:日本小児血液・がん学会
成長ホルモン療法の助成に関して
低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。
成長ホルモン療法の助成に関して
「小児慢性特定疾病の対象疾患について」に戻る