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慢性骨髄性白血病

まんせいこつずいせいはっけつびょう

Chronic myeloid leukaemia; CML

告示番 号83
疾病名慢性骨髄性白血病
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疾患概念

慢性骨髄性白血病(CML)は慢性期から移行期、急性転化期へ進行する骨髄増殖性疾患である。造血幹細胞にPh染色体、すなわちBCR-ABLキメラ遺伝子が形成されると、ABLチロシンキナーゼの恒常的な活性化から細胞増殖の亢進、アポトーシスの阻害、骨髄ストローマへの接着異常、ゲノムの不安定性が生じ、慢性期には顆粒球系細胞への分化、増殖が強く誘導される。移行期、急性転化期には未分化な芽球の増殖がみられる。

疫学

CMLは小児の全白血病の中で2-3%を占める比較的まれな疾患である。18歳未満の発症頻度は国内で年間約20例である。多くは思春期以降に発症するが、2~6歳の幼児期発症例もまれではない。年長児は男児に発症頻度が高い傾向がある。

症状

慢性期では初期は無症状である。成人では検診で早期発見されるが、小児ではしばしば発見が遅れ、発熱、倦怠感、腹部膨満などの自覚症状をきっかけに診断されることが多い。約10%に、白血球増多による微小血管の塞栓から、視力障害、持続勃起症などのleukostasisによる症状が生じる。急性転化期には急性白血病と同様の症状や所見を呈する。皮疹やリンパ節腫大などの髄外腫瘤から始まる急性転化も珍しくない。

診断方法

治療

慢性期では、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のイマチニブ(グリベック®)を成人の標準投与量400mg/日に相当する260mg/m2/日から開始する。ニロチニブ(タシグナ®)またはダサチニブ(スプリセル®)を選択することも可能。治療効果の定義(表1)を用いて、表2の治療効果判定基準に従い、所定の時期の達成度により治療方針を決定する1)。イマチニブにFailureと判定され、ニロチニブ(タシグナ®)またはダサチニブ(スプリセル®)に変更した場合には表3の治療効果判定基準に従い、変更後からの所定の時期の達成度により治療方針を決定する。TKIに不耐容の場合には別のTKIに変更する。分子遺伝学的完全寛解を達成した患者は将来イマチニブを中止できる可能性があるが、安全な中止基準はまだ定まっていない。
同種造血幹細胞移植の適応はT315I変異あり、初発時急性転化期、反応不良の移行期、TKI投与中の病期進行、2種類のTKIに抵抗性もしくは不耐容の慢性期の患者に限られる。

予後

慢性期CMLの予後に関しては、2011年の 日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG) による全国調査で、初期治療をイマチニブで行った診断時20歳未満の慢性期CML 148例の5年無増悪生存率は92%、5年全生存率は95%であった2)。死因は全例、移植関連死であった。フランスの18歳未満の慢性期CML 44例を対象とした臨床試験では3年無増悪生存率が98%であった3)。移行期・急性転化期CML(診断時)の予後に関しては、小児では患者数が少ないため明確なデータはないが、2011年のJPLSG による全国調査では、移行期は11例中10例の生存、急性転化期は17例中12例の生存を認めた(未発表)。

文献

1) Baccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia. Blood 122: 872-84, 2013.
2) 谷澤昭彦、遠野千佳子、伊藤正樹、嶋晴子、渡辺輝浩、黒澤秀光、湯坐有希、堀田紀子、村松秀城、岡田雅彦、加藤剛二、齋藤明子、足立壮一、堀部敬三、嶋田博之、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)CML委員会.小児慢性期CMLにおけるイマチニブによる治療成績 JPLSG CML11疫学調査報告.日本小児血液・がん学会学術集会・日本小児がん看護学会・公益財団法人がんの子どもを守る会公開シンポジウムプログラム総会号55回・11回・18回 Page232(2013.11)
3) Millot F, et al. Imatinib Is Effective in Children With Previously Untreated Chronic Myelogenous Leukemia in Early Chronic Phase: Results of the French National Phase IV Trial. J Clin Oncol 29:2827-32, 2011.

表1. 治療効果の定義



血液学的効果 (HR) 細胞遺伝学的効果 (CyR) 分子生物学的効果 (MR)
血液学的完全寛解(CHR):

以下の全項目を 2週間以上持続すること
・白血球数 10,000 /μL 未満
・血小板数 450,000 /μL 未満
・白血球分画の正常化
 ─ 幼弱顆粒球の消失かつ
 ─ 好塩基球 5% 未満
・脾腫(触診)の消失
Complete (CCyR) Ph+ 0 % MR4.5 国際スケールで、BCR-ABL/ABL比が 0.0032 % 未満。または ABL > 32,000 コピーの cDNA で BCR-ABL が不検出。
Partial (PcyR) Ph+ 1 ~ 35 %
Minor Ph+ 36 ~ 65 %
Minimal Ph+ 66 ~ 95 % MR4.0 国際スケールで、BCR-ABL/ABL比が 0.01 % 未満。または ABL > 10,000 コピーの cDNA で BCR-ABL が不検出。
No Ph+ > 95 %
骨髄 G 分染法を用いる。CCyR の判定のみ、末梢血 FISH 法を用いてもよい。
Major (MMR) 国際スケールで、BCR-ABL/ABL比が 0.1 % 以下。

表2. チロシンキナーゼ阻害薬の治療効果判定基準および治療方針(ファーストライン治療、および不耐容によるセカンドライン治療)


判定時期Optinal resposeWarningsFailure
開始時 ・ハイリスク∗1
・Ph+細胞のクローン性染色体異常
 
3ヶ月 以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比≤10%
・PCyR達成(Ph+≤35%)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比>10%
・PCyR未達成(Ph+36-95%)
以下のいずれかまたは両者
・CHR未達成
・CyRなし(Ph+>95%)
6ヶ月 以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比<1%
・CCyR達成(Ph+0≤)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比 1-10%
・PCyR(Ph+1-35%)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比>10%
・PCyR未達成(Ph+>35%)
12ヶ月BCR-ABL/ABL比≤0.1%
(MMR達成)
BCR-ABL/ABL比>0.1-1%
(MMR未達成)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比>1%
・CCyR未達成(Ph+>0%)
12ヶ月以降 BCR-ABL/ABL比≤0.1%
(MMR達成)
Ph細胞のクローン性染色体異常(−7または7q−) 以下のいずれか
・CHRの消失
・CCyRの消失
・MMRの消失∗2
・ABL遺伝子変異
・Ph+細胞のクローン性染色体異常
治療方針∗3 治療変更の必要なし Failureを見逃さないために頻回の
モニタリングが必要。
①イマチニブにFailure
ニロチニブ、ダサニチブ、ボスチニブ、またはポナチニブへ変更
②ニロニチブにFailure
ダサニチブ、ボスニチブ、または
ポナチニブへ変更
③ダサニチブにFailure
ニロチニブ、ボスニチブ、または
ポナチニブへ変更
④T3151変異がある場合
ポナチニブへ変更
⑤移行期・急性転化期に進行
末投与のTKIに変更後(しばしば化
学療法の併用が必要)、同種造血
幹細胞移植

  • ∗1 Sokal、HasfordあるいはEUTOSスコアによる評価。
  • ∗2 連続した2回の検査値のうち1回がBCR-ABL/ABL比≥1%を示した場合をMMRの消失と定義。
  • ∗3 ボスチニブおよびポナチニブは2013年現在、国内未承認。

表3. ニロチニブ・ダサチニブ治療効果判定基準と治療方針(イマチニブにFailureの患者に対するセカンドライン治療)


判定時期Optinal resposeWarningsFailure
変更時 ・CHR未達成またはCHRの消失
・CyRなし(Ph+>95%)
・ハイリスク∗1
 
3ヶ月 以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比≤10%
・PCyR達成(Ph+≤65%)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比>10%
・PCyR未達成(Ph+65-95%)
以下のいずれかまたは両者
・CHR未達成
・CyRなし(Ph+>95%)
・ABL変異の新たな出現
6ヶ月 以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比≤10%
・Ph+‹35%
・Ph+ 35-65% 以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比>10%
・Ph+›65%
・ABL変異の新たな出現
12ヶ月 以下のいずれかまたは両者
BCR-ABL/ABL比‹1%
・CCy達成(Ph+0%)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比 1-10%
PCyR(Ph+1-35%)
以下のいずれかまたは両者
・BCR-ABL/ABL比›10%
・PCyR未達成(Ph+›35%)
・ABL変異の新たな出現
12ヶ月以降 BCR-ABL/ABL比≤0.1%
(MMR達成)
以下のいずれか
・Ph細胞のクローン性染色体異常(−7または7q−)
・BCR-ABL/ABL比›0.1%
(MMR未達成)
以下のいずれか
・CHRの消失
・CCyRの消失
・MMRの消失∗2
・ABL遺伝子変異
・Ph+細胞のクローン性染色体異常
治療方針∗3 治療変更の必要なし Failureを見逃さないために頻回の
モニタリングが必要。
未投与のTKIへ変更、または同種造血
幹細胞移植
ただし、T3151変異がある場合には
ポナチニブへ変更。移行期・急性
転化期に進行の場合には、未投与
のTKIに変更後(しばしば化学療法
の併用が必要)、同種造血幹細胞移植


  • ∗1 Sokal、HasfordあるいはEUTOSスコアによる評価。
  • ∗2 連続した2回の検査値のうち1回がBCR-ABL/ABL比≥1%を示した場合をMMRの消失と定義。
  • ∗3 ボスチニブおよびポナチニブは2013年現在、国内未承認。
:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本小児血液・がん学会
成長ホルモン療法の助成に関して
低身長を認め成長ホルモン治療の対象基準を満たす場合は、小慢による成長ホルモン治療助成の対象となります。
成長ホルモン療法の助成に関しては下記を参照してください。
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