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ハーラマン・ストライフ症候群

はーらまん・すとらいふしょうこうぐん

Hallermann-Streiff syndrome; HSS; Hallermann-Streiff-Francois syndrome

告示番 号19
疾病名ハーラマン・ストライフ症候群
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概念・定義

特徴的な顔貌(小顎症・狭い鼻堤)、均衡型低身長、疎な毛髪、小眼球症や先天性白内障等の眼症状を特徴とする疾患。眼・下顎・顔症候群(oculo-mandibulo-facial syndrome)ともよばれる。

病因

責任遺伝子は同定されておらず、発症機序も不明である。

疫学

全国の49の大学病院・小児医療センターの小児遺伝診療担当医への2016年の調査では、5例の確定診断例の報告があった。
全国では30~50名程度の患者が存在すると推定される。
性差は認められず、明らかな家族例も認められていない。

臨床症状

小顎症や狭い鼻堤などの特徴的な顔貌を呈し、均衡型低身長、疎な毛髪、小眼球症や先天性白内障等の眼症状を特徴とする。
歯牙欠損や皮膚の菲薄化を伴う事も多い。小下顎のために新生児期から乳児期の哺乳障害や上気道の狭窄による呼吸障害・呼吸器感染症を合併しやすい。
通常精神発達遅滞は伴わないが、時に重度の知的障害を伴う事もある。また、視力障害による二次的な発達遅滞を生じる事もある。

検査所見

本症に特異的な検査所見はない。

診断の際の留意点

眼・歯・指異形成症(oculo-dento-digital dysplasia: ODDD)は、眼・歯・骨症候群(oculo-dento-osseous syndrome)とも呼ばれ、
特徴的な顔貌、低身長、疎な毛髪、眼症状など本症に極めて類似した症状を呈する。GJA1遺伝子のヘテロ変異により発症する常染色体優性遺伝疾患である。
本症とは異なり、第Ⅳ・Ⅴ指の合指(合指症Ⅲ型)や屈指などの指趾奇形を有することで、鑑別が可能である。

治療

小児期は、顔面や下顎の低形成に伴う気道閉塞により重症気道感染や睡眠時無呼吸を来すことがあり、気管切開や舌の外科的挙上を要することもある。
小下顎による上気道の狭窄には気管切開、経鼻的持続性陽圧呼吸、舌の外科的挙上などが有効である。気管軟化症も伴うことがあり注意を要する。
眼科的医療管理も重要である。先天性白内障は自然軽快することもあるが、視力障害に基づく二次的精神発達遅滞を予防するためにも
早期手術を要する。また、手術にもかかわらず、視神経乳頭欠損や網膜色素変性などにより矯正視力の得られないことがある。

合併症

下顎の低形成により、新生児~乳児期に哺乳障害や上気道の狭窄による呼吸障害・呼吸器感染症を合併しやすい。
生殖能力の低下を認めたとする報告もあるが、少なくとも女性では国内外で7回の挙児例がある。

予後

閉塞性気道障害に対するサポートが必要となる事がある。時に重度知的障害を伴う事もある。視力障害は程度に差はあるがほぼ全例で認める。
成人患者の約半数に閉塞性呼吸障害が認められ、睡眠時無呼吸の治療を要する例も10%程度ある。緑内障のリスクもあるため、眼圧の定期的測定が必須である。
時に重度知的障害も伴うこともあり、長期にわたる支援が必要となる事がある。

成人期以降の注意点

小下顎症による睡眠時無呼吸が半数近くに認められ、ポリソムノグラフィーから得られた無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)
が15以上の中等症~重症例にあたる約10%の症例では経鼻的持続陽圧呼吸療法や外科的手術の適応となる。
小眼球症に伴う原発性閉塞隅角緑内障、ならびに先天性白内障の術後合併症として続発性閉塞隅角緑内障を来たし、
眼圧の上昇(22mmHg以上)する例が7~11%あり、緑内障の薬剤治療や隅角開放術などの手術療法を要する。

参考文献


  1. 平成26年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討」研究班
  2. Cohen MM Jr: Hallermann-Streiff syndrome: a review. Am J Med Genet 41:488-499, 1991.
  3. Numabe H, Sawai H, Yamagata Z et al.: Reproductive Success in Patients with Hallermann-Streiff Syndrome. Am J Med Genet A 155: 2311-3, 2011.
  4. 沼部博直: oculo-mandibulo-facial syndrome, Hallermann-Streiff syndrome. 日本臨牀社,日本臨牀別冊神経症候群(第2版)Ⅳ,p.565-568, 2014.
:バージョン1.0
更新日
:2017年3月17日
文責
:日本小児遺伝学会
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