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カムラティ・エンゲルマン症候群

からむてぃ・えんげるまんしょうこうぐん

Camurati-Engelmann disease

告示番 号10
疾病名カムラティ・エンゲルマン症候群
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概念・定義

頭蓋骨・上腕骨・大腿骨・脛骨・腓骨等の過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、
四肢痛を特徴とする骨系統疾患である。進行性骨幹異形成症(Progressive Diaphyseal Dysplasia)とも呼ばれる。その症状は幼児期と青年成人期で異なる。
幼児期は、筋力低下、易疲労性を主徴とし、青年成人期は、骨幹の疼痛、めまい、難聴を主徴とする。

病因

TGFB1遺伝子(transforming growth factor β1)の変異により発症する常染色体優性疾患である。TGFB1遺伝子がコードするタンパクは分泌シグナル、
TGF-β1タンパク、TGF-β1タンパクの活性を抑制・潜在化させる潜在型結合ペプチド(latency-associated peptide:LAP)の3ドメインからなる。
カムラティ・エンゲルマン症候群の患者でみられる遺伝子変異のほとんどは、3つのドメインのうちLAPをコードする第4エクソン上に存在する.
変異によって常にTGF-β1が活性化した状態となる事が疾患発症の原因と考えられている。変異のほとんどはエクソン4のC225R、R218H、R218C、C223R変異である。

疫学

本邦における推定患者数は約30人。
現在までに世界中で200名以上が論文で報告されている。

臨床症状

カムラティ・エンゲルマン病の四主徴は筋力低下、易疲労感、四肢の疼痛、Marfan様体型である。これらの症状は思春期頃までに顕在化してくる事が多い。
筋力低下は多くの場合、下肢の近位筋にみられ、この結果、座位からの立位困難、幅広の歩行、動揺性歩行等が半数以上の患者に認められる。
四肢の疼痛はほとんどの患者で認められる。疼痛は持続性の鈍痛(aching)で、動作やストレス・低温などで増悪する。症状は年齢と共に変化し、
成人以降になると顔面神経麻痺・頭痛・難聴(感音性難聴)・うっ血乳頭・めまい・耳鳴り等の症状が加わる。これらの症状は神経孔の狭窄による神経麻痺や、
頭蓋底の骨肥厚や骨硬化の進行により生じると考えられている。

検査所見

頭蓋骨・上腕骨・大腿骨・脛骨・腓骨等の過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚と長管骨骨幹部の紡錘形肥大。
TGFB1遺伝子変異。聴力検査、視力検査。末梢血検査。

診断の際の留意点

定期的な聴力検査および眼科学的検査を含む神経学的所見の評価や造血能のチェックが重要である。

治療

成人期の骨痛の抑制に対してはステロイドが有効であるが、一過性であるので繰り返し投与が必要となる。その他確立した治療法はない。
ステロイドの開始後、高血圧に注意する。神経麻痺に対して外科的治療が行われる場合もあるが、通常骨病変は進行性であるため無効であったり、
治療後に症状が再燃する事がある。頭蓋底などの骨硬化の進展を抑える治療法は確立されていない。

合併症

青年成人期では、主症状である骨痛とともに、頭蓋底の骨硬化によるめまい、難聴を伴うことがある。

予後

骨痛は90%に認められ、思春期の完成とともに改善する症例と進行していく症例が知られているが、成人期にいたっても骨痛は持続する場合が少なくない。
確立した治療法がないため、予後は不良である。

成人期以降の注意点

思春期発症の進行性の疾患である。

参考文献


  1. 26年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討」研究班
  2. 「カムラチ・エンゲルマン病の治療法の確立:新規遺伝子探索、モデル構築、分子標的治療薬の探索班」
:バージョン1.0
更新日
:2017年3月17日
文責
:日本小児遺伝学会
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