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ハッチンソン・ギルフォード症候群

はっちんそん・ぎるふぉーどしょうこうぐん

Hutchinson-Gilford syndrome; Hutchinson-Gilford progeria syndrome; HGPS

告示番 号58
疾病名ハッチンソン・ギルフォード症候群
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概念・定義

生後半年~2年より水頭症様顔貌、禿頭、脱毛、小顎、強皮症を呈するが、精神運動機能や知能は正常である。
脳梗塞、冠動脈疾患、心臓弁膜症、高血圧、耐糖能障害、性腺機能障害を合併し平均寿命は13歳と報告されている。

病因

現在のところLMNA遺伝子の変異が同定されている。大多数の患者ではエクソン11内の点突然変異(G608G, GGC>GGT)による。
スプライシング異常が生じ、N末の50アミノ酸が欠損した変異Lamin Aタンパク(progerin)が合成される。
変異タンパクprogerinは、翻訳後のプロセッシング異常に伴いタンパクのファルネシル化が持続し、
核膜や核内マトリックスに異常を生じると推定されてる。

疫学

難病研究班の全国調査で約10人の患者が確認されており、成人例も含まれる。
海外でも20歳を超えた生存例が報告されている。

臨床症状

乳児期から全身の老化現象、成長障害、特徴的顔貌を呈する。年齢を重ねるとともに老化に伴う多彩な臨床徴候を呈する。
乳幼児期から脱毛、前額突出、小顎等の早老様顔貌、皮膚の委縮や硬化と関節拘縮はほぼ全例に観察される。
一方、動脈硬化性疾患による重篤な脳血管障害や心血管疾患は加齢とともに顕在化し生命予後を規定する重要な合併症である。
一方、悪性腫瘍は10歳以上の長期生存例に認められる合併症として重要である。

検査所見

乳幼児期から老化に伴う検査所見を認める。耐糖能異常や脂質代謝異常、高血圧に伴う様々な検査所見を認めるが特異的な検査所見はない。

診断の際の留意点

LMNA 遺伝子G608G変異のHGSP診断に関する感度・特異度ともに極めて高い。一方、同じコドンの異なる変異(G608S)や、
LAMN遺伝子内の別の型の変異(複合へテロ接合)でも酷似した表現型を認めたとする報告がある点に留意する必要がある。
LAMN遺伝子変異により臨床症状を呈する疾患群はラミノパチーと総称され、10以上の疾患が知られている。
遺伝子型と表現型(疾患)には高い相関があるが、一方で疾患がオーバーラップする場合もありG608G以外のLAMN遺伝子変異の場合、
遺伝子型のみではHGPSの診断を誤る可能性もある。

治療

現時点では確立した治療法はない。老化に伴う症状に対する対症療法のみである。
近年、Gタンパク質のファルネシル転移酵素(FT)阻害剤による治療が海外で試されており一定の効果が報告されている。

合併症

動脈硬化性疾患による脳血管障害や心血管疾患、耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧、骨粗しょう症、がんなど、老化に伴う様々な疾患を合併する。

予後

10歳代でほぼ全例が死亡し、生命予後は極めて不良である。

成人期以降の注意点

動脈硬化性疾患に加え、がんの発生(特に多重がん)に留意する必要がある

参考文献


  • Hennekam, R.C., Hutchinson-Gilford progeria syndrome: review of the phenotype. Am J Med Genet A, 2006. 140(23): p. 2603-24.
  • Merideth, M.A., et al., Phenotype and course of Hutchinson-Gilford progeria syndrome. N Engl J Med, 2008. 358(6): p. 592-604.
:バージョン1.0
更新日
:2017年3月17日
文責
:日本小児科学会
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