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TRPV4異常症

てぃあーるぴーう゛ぃふぉーいじょうしょう

Transient receptor potential cation channel, vanilloid subfamily, member 4 (TRPV4) -associated disorders

告示番 号17
疾病名TRPV4異常症
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概念・定義

カルシウムイオン透過性チャンネルであるTRPV4 (transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 4)の
遺伝子異常によって発症する症候群で、変容性骨異形成症、脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型、脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型、
短体幹症、短指を伴う家族性指関節症などが含まれる。いずれの疾患においても扁平椎、関節の腫大および拘縮、
低身長などを共通の表現型とするが、重症度は様々である。脊柱や四肢関節の変形を伴いやすく、
早発性の変形性関節症や変形性脊椎症を発症しやすいため、それらに対する整形外科的な対応を要することが多い。

病因

TRPV4遺伝子の機能獲得型変異により、内軟骨性骨化が障害されることにより発症すると考えられているが、
発症メカニズムの詳細は明らかではない。また、遺伝子変異と表現型との関連に関しても不明な点が多い。

疫学

本邦での患者数は不明であるが、日本整形外科学会骨系統疾患全国登録によれば、
1990-2015年の26年間に変容性骨異形成症が30例、脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型が2例、
脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型が2例、短体幹症3例が登録されている。

臨床症状

変容性骨異形成症は出生時には四肢短縮型低身長を呈するが、成長とともに脊柱変形が増悪して体幹短縮型低身長に変容する。
尾骨部に認める尻尾のような皮膚のヒダは臨床的特徴である。胸郭は狭く、呼吸障害のため致死性となる重症例もある。
四肢の大関節は著明に腫大して可動域制限をきたす。脊柱変形は進行性で治療に抵抗する。環軸椎不安定性による脊髄症を生じることがある。
X線所見としては、ダンベル状の長管骨、鉾槍状の腸骨、著しい扁平椎などが特徴である。

脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型は低身長、手指・足趾の短縮、扁平椎などを呈するが、脊柱変形は軽度なことが多い。
手指では早発性の変形性関節症を生じる。

脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型は体幹短縮型低身長を呈し、樽状の胸郭、脊柱変形、関節拘縮、下肢変形などを特徴とする。
X線所見としては扁平椎が著明で、椎体の前後径および左右径は増大し、正面像で椎体辺縁が椎弓根より著しく外方に存在する
(open staircase appearance)。

短体幹症も体幹短縮型低身長を呈するが、扁平椎の程度は強いが四肢の短縮は軽度なことが特徴である。

短指を伴う家族性指関節症では脊柱や四肢に明らかな病変を認めず、手指の変形性関節症が進行する

検査所見

X線所見
  • 長管骨の短縮、骨幹端部の横径増大によるダンベル状変形
  • 腸骨翼が横径増大による鉾槍状腸骨(halberd pelvis)
  • 扁平椎と終板不整

診断の際の留意点

低年齢の変容性骨異形成症を診断する際には、四肢短縮型低身長を呈する他の骨系統疾患、
特にKniest骨異形成症との鑑別が重要となる。顔貌異常の有無(Kniest骨異形成症では顔面骨の低形成があるが、
変容性骨異形成症では正常)、胸郭の形態(Kniest骨異形成症では樽型、変容性骨異形成症ではベル状の狭細な胸郭)
などが鑑別のポイントとなる。

治療

根本的な治療法はなく、個々の症例において脊柱変形、変形性関節(脊椎)症などに対する整形外科的な対症治療が必要となる。
変容性骨異形成症では脊柱変形や環軸椎不安定性に伴い脊髄症が発症して、変形矯正術や除圧固定術などを要することがある。
また、重症型の変容性骨異形成症では著しい胸郭・脊柱変形のため呼吸機能障害をきたし、酸素投与などの呼吸管理を必要とするものもある。

予後

最重症型の変容性骨異形成症は周産期致死性であるが、それ以外の疾患での生命予後は良い。
しかし、変形や拘縮、変形性関節症を合併することが多く、加齢とともに日常生活動作の低下を招く。

成人期以降の注意点

成人期以降の長期予後についてのデータ集積はない。しかし、特に変容性骨異形成症では小児期より脊柱や関節の変形が著明で、
早発性の変形性関節症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症などを発症するため、加齢とともにADLが低下することが危惧される。

参考文献


  • 日本整形外科学会作成の診断基準
:バージョン1.0
更新日
:2017年3月17日
文責
:日本小児整形外科学会
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