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MHCクラスⅠ欠損症

えむえいちしーくらすわんけっそんしょう

major histocompatibility complex class I deficiency

告示番 号36
疾病名MHCクラスⅠ欠損症
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概要

MHCクラスI (HLA class I)は全ての有核細胞の表面に発現し、ウィルスなどの抗原ペプチドをCD8陽性T細胞に提示する働きをする。MHCクラスI欠損症はこの分子の発現が低下する疾患で、Bare lymphocyte syndrome type Iとも呼ばれる。

病因

現在のところTAP1、TAP2、TAPBP遺伝子が原因として知られている。いずれも常染色体劣性遺伝を示す。TAP1、TAP2は小胞体膜に存在し、抗原ペプチドを小胞体内に取り込むトランスポーターである。取り込まれたペプチドはMHCクラスIと結合し細胞表面へと輸送される。このペプチドローディングにはMHCクラスIとTAPの結合が必要で、そこにTAPBPが関与する。ペプチドを得ないMHCクラスIは不安定で細胞膜に輸送されない。原則的にMHCクラスIはウィルスに対する免疫に関与するが、この疾患ではウィルス感染症が重篤化することはまれで他の機序が代償していると推測されている。しかし重篤化はしないがウィルスが十分に除去されないために、感染局所、特に気道でIL-8が持続的に産生され、好中球による細胞障害をきたし、さらに炎症性サイトカインにより活性化したNK細胞、γδT細胞によりMHCクラスIの発現しない気道上皮細胞が障害され、細菌に対する易感染性をきたすと考えられている

疫学

特に症状のないものもいるため罹患率の把握は困難だが、2011年に報告された日本における免疫不全症疫学調査では、1240名の原発性免疫不全症患者にMHCクラスI欠損症患者は含まれておらず非常にまれと考えられる.

臨床症状

たまたま見つかる無症状のものから、重篤な症状をきたすものまで非常に幅がある。通常MHCクラスII欠損症に比べて軽症である。慢性の細菌性上下気道感染症を示し、主な病原菌はインフルエンザ桿菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などである。長期の経過により気管支拡張症をきたし、呼吸不全が主な死因となる。皮膚の慢性壊死性肉芽腫性病変や潰瘍性病変を伴う患者や、血管炎を伴う患者もいる。血液検査ではTCRαβ+CD8陽性T細胞の減少を示す

治療

根治治療は確立されていない。造血幹細胞移植はドナーNK細胞によるGVHDのリスクがあり一般的ではない。抗生剤の予防投与は推奨される。ガンマグロブリンは通常低下しないが、ガンマグロブリン投与は有効かもしれない。皮膚症状に対してソラレン+UVA治療の有効性が2例で示されている。一方皮膚症状に対して免疫抑制療法は皮膚病変の悪化、肺病変の増悪を示し現在のところ行うべきでないと考えられている

合併症

鼻茸をしばしば伴う

:バージョン1.0
更新日
:2014年10月1日
文責
:日本免疫不全症研究会
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